賃貸物件で、仲介手数料無料の物件ってありますよね。仲介手数料半額というのものあります。物件だけではなく、「当店は仲介手数料半額です」だとか「仲介手数料無料専門店」とうたう賃貸ショップもあります。
もちろん入居者からすれば、引っ越しに伴う支出は少しでも抑えたいですから、手数料が無料なのは大歓迎ですよね。。。でも「仲介手手数料が無料」「仲介手数料が半額」には、入居者が知らされない大きなからくりがあります。
仲介手数料の入居者負担は、本来は賃料の半月分
不動産会社が得る賃貸の仲介手数料なんですが、法律(宅地建物取引業法)で国土交通大臣が決めるということになっていて、貸主(大家)と借主(入居者)が賃料の「0~半月分」を負担して、「合計で」一ヶ月分以内と定められています(国土交通省の告示)。6万円の賃料物件の仲介手数料であれば、大家から3万円、入居者から3万円、合計6万円をもらってよいよ。それより少なくてもいいけど、多いのはダメよ。となっています。
なので、入居者が、進んで一ヶ月分の仲介手数料を払う必要は全くありません。なんですが、不動産会社は、その他の費用をもらっている大家から仲介手数料を取りにくいので、入居者へ賃料一ヶ月分の仲介手数料を迫るという業界の残念な慣行になっているんです。
不動産会社は、このつじつまを合わせるために、「入居者が賃料一ヶ月分の仲介手数料を負担する」という説明を重要事項として入居者に説明し、その説明を受け了承したとして重要事項説明書にサインを求めます。これで本来、大家と入居者から半分づつもらうとなっている仲介手数料を、入居者からの依頼に基づいて(!?)100%入居者からもらうということになるのです。入居者からの依頼なので、一ヶ月分全部入居者からもらっちゃいますよ、という構図です。みなさん、これってどう思います?自分から「依頼して」倍の仲介手数料を払いたい入居者が居るでしょうか?(僕は、相当におかしな商慣習だと思います)。
きちんと説明をせず、入居者から仲介手数料を賃料一ヶ月分取ったとして、大手不動産会社2社が営業停止に追い込まれたこともあります。本来、不動産会社が入居者にきちんと説明をして、入居者が納得の上、仲介手数料を一ヶ月分負担するというルールを守っていないとして行政処分が下ったのです。業界への見せしめ的な出来ことでした。
大手2社は、その後「当社は、仲介手数料半額!(半月分)」とうたっています。本来は、入居者にとって仲介手数料が半額になるっていうのは、「負担すべき手数料:賃料50%(半月分)」の半額=「賃料の25%」となることだと思います。ですが、そんな律儀な不動産会社は、僕の知る限りどこにもいません。そういう会社があれば、まじめ不動産が宣伝しますので、ぜひ教えてください(笑)
おかしな商慣習を元に、2倍の仲介手数料を入居者からもらっておきながら、ルールどおり賃料50%を取ることを、「半額!」という業界は、不動産会社をおいてほかにはありません。。
仲介手数料無料のからくり
というわけで、仲介手数料は入居者から一ヶ月分もらっちゃおうというのが通例になってます。なのに、仲介手数料を無料にしてビジネスが成立するというのはどういうことか。大きなからくりがあるんです。一言でいうと、入居者からはお金を取らない代わりに、大家からたくさんもらう。これです。
大家からは何をもらうかというと「広告料」(通称ADといいます)です。この「広告料」の仕組みもかなりグレーなんです。先ほど紹介した国土交通省が定めた不動産会社の報酬規程に、以下のようなただし書きがあります。
- 「ただし、依頼者の依頼によつて行う広告の料金に相当する額については、この限りでない。」
ここで書かれている依頼者というのは、入居者のことではなく物件を持っている大家のことです。支払う広告料金の金額は大家が決定します。地域などにもよるようですが、相場は賃料の一ヶ月分です。そして業者間流通の物件情報にAD100%と大家から委託された管理会社が入力します。賃貸物件を入居者に紹介する賃貸ショップの営業マンは、このADの金額を必ず確認します。ADがついていない人気物件(広告料を大家が払わなくても埋まってしまうような人気物件。大家が強気に出てADをつけない)を紹介しても、儲かりません。
逆にAD200%(賃料6万円であれば12万円)なんていう物件もあります。仲介会社の取り分が2倍です。僕は、AD400%(賃料の4倍を大家から仲介会社に提供)という物件も見たことあります。AD100%では、物件の供給過多で決まらないエリアだったり、日当たりがイマイチだとか、周りがうるさいなど、なんらかの大きな弱点があるような入居者が決まりにくい不人気物件です。まれに、物件はまあまあだけど、大家が入居者決定をすごく急いでいる場合なんかもまれにあります。しかし、多くのADをつけないとすぐに入居者が決まらないということなんです。
つまり、仲介手数料を無料にしている賃貸ショップの多くは、高額のADがついた人気がない物件を紹介する専門店ということになります。仲介手数料が無料だから、お客さんはたくさん来る、そこにADがたくさんついた高額報酬の物件を紹介し仲介契約を取る。そもそも広告料の規定というのは、物件の広告料に応じた額をもらうというものですが、仲介手数料無料の賃貸ショップは、そんな不人気物件を広告しません。来店した入居者に対して、とっておきの物件として紹介するのです。もちろん、仲介手数料無料でよいお店というのもあるでしょうが、高額AD狙いのお店というので十中八九間違いないです。仲介手数料の賃貸ショップは、気を付けましょう。
貸主から直接借りれば仲介手数料は不要
仲介手数料が無料のケースがもうひとつあります。不動産会社の所有物件や管理物件を直接借りる場合です。
物件を所有する不動産会社は、貸主企業と呼ばれ大家として賃貸業を生業としています。大家から直接借りるわけですから、仲介手数料が無料というより、誰からも仲介を受けていないので仲介手数料が「不要」といったほうが適切かもしれません。有名どころでは、「UR」「大東建託」「レオパレス21」などが貸主会社です。
物件を大家から委託され管理している不動産会社でお部屋探しをして直接契約する場合も仲介する会社が不在ですから、仲介手数料不要となります。
貸主企業や管理会社との直接契約は、仲介手数料が不要という点で賃料一ヶ月分の初期費用を抑えるメリットがありますが、自社の所有または管理物件を強くお勧めしてくる(まずは自社の物件を満室にしたい!)ので、貸主企業や管理会社でのお部屋探しは、たくさんの物件を見たいんだという方には不向きというデメリットもあります。この物件に住みたいんだ!と決まっている方は、直接契約がおススメです。
仲介手数料無料だからといって最高なわけではない
仲介手数料無料で、たくさんの物件を紹介してくれる賃料ショップが良いお店というわけでありません。お部屋が絞り込めていない段階では、貸主会社や管理会社で狭い範囲でのお部屋探しをすることが良いとも言えません。仲介手数料は、無数の物件からあなたの好みの物件を探してくれる不動産会社の手間賃だと割り切って、いいお部屋との出会いにこだわって多くの物件を紹介してもらうというのも良いと思います。
少しでも初期費用を安く抑えようと、仲介手数料無料にこだわって、ADがたっぷりついた不人気物件に住んだ後に、すごく後悔する(住んだ後に、不人気物件の理由が発覚する)というのが最悪な選択だと思います。
みなさんの賃貸のお部屋探しお役に立てるような記事は、これからたくさん配信し紹介ていきたいと思います。この記事を読んだ方の賃貸のお部屋探しが成功しますように。